人類資金Ⅴ
著者:福井晴敏 発行:2013/12 講談社文庫
読んでいてビリビリと〝しびれて〟しまったのは
行ってみて初めてわかる事々はある。(P19)
でも、それを実現するには、ぼく自身が確信できるなにか・・・・・・自分で自分に証明できるなにかを見つけなければならない。(P21)
まだ電話をかけたこともない後発国の人々、世界の半数以上を占める人々の中に、先進国のそれと同じ割合で才能が存在しているのだとしたら。(P23)
この世界から後発国や貧困がなくなり、全部が完全に市場化されたら、次はこの空の向こう、宇宙に飛び出していったっていい。思えば、叶わぬことはない。(P69)
利子ってのは、将来価値の先取りだ。常に貸出金額より返済金額の方が多くなる。その分は、将来的な利潤活動から・・・・・・極論すれば他の誰かから奪ってこなければならない。(P110)
シンガポールでは参謀本部の強硬な主張に屈し、華僑虐殺事件を承認した。(P150)
善良であったはずの個人が、国家・組織の論理に捕らわれた瞬間に悪を為す。組織人としての責任が、個々に課せられた道義的責任を圧倒して悪行を強要する。(P150)
ポツダム宣言の執行機関であるGHQの使命は、軍政日本帝国を民主国家・日本に生まれ変わらせることにあった。軍隊の解体、思想・信仰・集会及び言論の自由を束縛するあらゆる法令の廃止、財閥解体と農地解放に代表される民生化政策。これらの施策は、既存の日本政府機構を利用する関節統治の形で実施され、長い戦争で精神的にも物質的にも困窮の極みにあった日本人は、彼らの施策を砂漠に降る慈雨のごとく受け入れた。(P168~169)
植民地主義に成り代わる新しい支配形態の実験台になった、その結果として戦後の繁栄があるとするなら、そこに日本人の主体的意志は存在しない。すべて借り物、押しつけられたシステムの中で泳がされてきたのが日本という国家であり、おれという人間だ。(P190)
(2018年の26冊目)