人類資金Ⅱ

人類資金Ⅱ

著者:福井晴敏 発行:2013/08 講談社文庫

 

読んでいて、思わずしびれてしまったのは

消費税がどうの、リクルート事件がこうのと筋道の立たない呪詛を垂れ流しながら、時おり思い出したように威嚇の声を張り上げ、奇妙に動かない目で行き過ぎる人を睨み据える。もはや競馬の予想も困難と思える病んだ頭は、しかしおそらくは生まれつきのものではあるまい。噛み合うべきところで噛み合わなかった歯車、逸脱に逸脱を重ねた人生の負荷が彼の正気を蝕んでいったのに違いなく、その眼には誰が落ちてもおかしくない暗い陥穽がある。そう、いまは見る影もなく落ちぶれているが、彼がかつてはやり手の同業者であった可能性だってないではないのだ。(P36)

政治家とヤクザが手を結んで、裏で国を操ってるなんて次元の話じゃねぇんだ。顔もねぇ、正体もわからねぇモノが世界中を支配していて、おれたちの知らねぇところで世の中を動かしてる。自分で決めたと思ってることも、みんなそいつらの手のひらの中だ。(P57)

もっと壮大な嘘で世界全部を騙している何者かがいる。騙す奴と騙される奴、世の中にはその二種類の人間しかいないのなら、おれたちが騙される側であっていい道理はない。(P69)

縦割り行政の弊害というだけではない、根底に断絶した歴史を敷く国家ならではの不実がそこにある。戦前戦中の記憶などすっかりなくしたような顔をしていながら、実はなにもかもがその上にできあがっている国、日本。終戦のどさくさに為された隠蔽、曖昧な約束事が現在にも隠然たる影響を及ぼし、東京の地下に戦争の遺産を留め続けている。遠い昔に発せられた声、〝探ってはならぬ〟と命じた父祖の声に従って。わからないことはわからないままに留めよという論理、職域以外は関知せずのセクショナリズムを唯一の正義にして。(P135)

成長し続けなきゃ見れない夢ってなんなんだ?無理なんだよ、もう。みんなで爪先立って、見かけの数字を稼いだってさ、誰も幸せになれてないじゃん。その無茶のカラクリが破綻したのが、リーマン・ショックや福島原発だろ。家や故郷を失った人間だっているのに、あれは事故でした、今度は気をつけますって、違うだろ。やり方が間違ってたんだよ。いまの〝ルール〟に従ってる限り、この先はもうないんだよ。(P148)

〝神〟それも 人の形をした〝神〟。ひどくいかがわしい言い回しだが、わかるような気はする。ある他人、ある言葉との出会いによって、人生が変わることはままある。教え導くのではなく、身の内に眠るなにかを共振させ、進むべき道を気づかせてくれる何者かとの出会い—(後略)(P155)

 

出会いで人生が変わる。ありますね。その場限りの出会い、しばらく続いた出会い、生涯続く出会い・・・期間の長短もあるけど、古い価値観の殻を破り、新しい想像力を得、行動力や方向性が大きく変わってしまった出会いが誰にもきっとあると思う。これからも、きっと・・・あるんじゃないかな、生きてる限りは。

(2018年の19冊目)

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