シルバー・レイクの岸辺で
By the Shores of Silver Lake
著者:ローラ・インガルス・ワイルダー (1867-1957)
画家:ガース・ウィリアムズ (1912-1996)
訳者:恩地三保子 (1917-1984)
発行:2003/2(刊行:1939)
福音館文庫
大草原の小さな家〈インガルス一家の物語〉のシリーズの4作目。
あとがきより
「インガルス一家の物語」について
この物語は、いまから100年以上まえ、北アメリカがまだ開けていなかったころ、大森林や大草原でのきびしい開拓生活のなかで成長していった、ひとりの少女ローラと、その家族の物語です。
大吹雪、イナゴの大群、日照り、熱病などの、思わぬ自然の脅威にいつもおびやかされながら、とうさんとかあさんとローラたち一家は、大自然のまっただなかで、助け合い、自分たちの手で、丸太を組みあげ家を建て、パンやバターやチーズをつくり、生活のどんなことでもひとつひとつ自分たちの手でつくり、家庭を、生活を築きあげていきます。人間の生活のこんな基本的なことが、深い喜びとなって、いきいきと、この物語から伝わってきます。それは、この作者、ローラ・インガルス・ワイルダーが、1870年代から1880年代に、実際に、生きる喜びにみちあふれた少女時代を送り、その経験を、そっくりそのまま、私たちの目の前に再現してみせてくれるからなのでしょう。
作者は、自分が5歳のときから、あちこちに移り住み旅の多かった少女時代を経て、アルマンゾ・ワイルダーと出会い結婚をして、娘が生まれ、インガルス家から離れ、新しい家庭をつくっていくまでのことを、9冊の本にして物語っています。この9冊をならべると、ひとりの女性の生涯と一家の一代記を描いた、大河歴史物語といえるでしょう。
1冊1冊にもりこまれた物語のおもしろさはもちろんのこと、何冊か通して読んだときに、年月を経て成長し、変化していくものの重みを、ずしりと深く感じずにはいられません。この物語が、1932年に1冊目が出版されてから現在まで、アメリカの子どもたちのベストセラーとして、代々、読みつがれてきたことも、こんなところに秘密があるのかもしれません。(P391~392)
読んでいて、思わず ぐっ と来たのは、
町のあちこちで、ほかの建物のなかからも、鋸をつかったり、釘を打ったりする音がきこえてきました。かあさんはいいました。「ビーズレイのおくさんはお気の毒に。頭の上ではまだ大工仕事が続いているなかで、ホテルをやってくんですからね」
「そうやって町や国ができていくんだよ。頭の上でも足もとでも金槌や鋸の音をさせながら、ともかく建てさえすればいいのさ」とうさんはいいました。「やりはじめもしないで、すべてが好都合になるのを待っているような心掛けじゃあ、何事も都合よく運びはしないんだ」(p341)
大草原の小さな家〈インガルス一家の物語〉シリーズは、家族愛はもちろんのこと、今日にもつながるアメリカのフロンティアスピリットを感じるシリーズでもあります。全9冊の物語を読んでみようじゃないか!
(2018年の38冊目)