不死身の特攻兵

不死身の特攻兵

軍神はなぜ上官に反抗したか

著者:鴻上尚史 発行:2017/11 講談社現代新書

すごい人がいたもんだな。
あの時代の日本にさ。
今を生きる僕達は、
もっと知らなければいけないよね。

同じ轍を踏まないように(P193)。

読んでいて印象に残ったところ

9回出撃して、体当たりしろという上官の命令に抗い、爆弾を落として、9回生きて帰ってきた人がいました。名前は佐々木友次。その時、彼は21歳の若者でした。(P3)

『青空に飛ぶ』講談社 2017/08 鴻上尚史 (P4)

『特攻隊 振武寮 証言・帰還兵は地獄を見た』講談社 著者:大貫健一郎 (P8)

『陸軍特別攻撃隊』著者:高木俊朗 文芸春秋 (P16)

『イムパール』著者:高木俊朗 (P24)

戦況が悪化すると、陸海軍の中から体当たり攻撃を主張する声が聞こえ始めた。(中略)
岩本大尉も竹下少佐も、体当たりには反対だった。理由は、体当たりが操縦者の生命と飛行機を犠牲にするだけで、効果があり得ないと考えるからだ。(中略)
どんなに急降下で突っ込んでも、飛行機の速度は爆弾の落下速度のおよそ半分になってしまう。(中略)
海軍の実験では、800キロの徹甲爆弾(非常に硬く装甲甲板の貫通能力があるタイプ)を高度3000メートルで投下することが、アメリカ艦船の装甲甲板を貫く最低の条件とされた。急降下では、貫通に必要な落下速度が出ないのだ。(中略)
甲板を貫く「徹甲爆弾」は海軍にしかなかった。(P33~35)

岩本隊長の作戦
「もうひとつ、改装した部分がある。それは爆弾を投下出来ないようになっていたのを、投下できるようにしたことだ」(中略)
「操縦者も飛行機も足りないという時に、特攻だからといって、一度だけの攻撃でおしまいというのは、余計に損耗を大きくすることだ。要は、爆弾を命中させることで、体当たりで死ぬことが目的ではない」(中略)
「体当たり機は、操縦者を無駄に殺すだけではない。体当たりで、撃沈できる公算は少ないのだ。こんな飛行機や戦術を考えたやつは、航空本部か参謀本部か知らんが、航空の実際を知らないか、よくよく思慮の足らんやつだ」(P68~70)

軍の検閲があるから、こういう記事を書いたというより、こういう記事を書いた方が国民が喜んだ。つまり、売れたから書いたと考えた方がいいだろう。売れるのなら、売れる方向に記者は熱を入れる。筆を競う。それが、さらに次の特攻を用意した。(P76~77)

攻撃を受け、生還の望みのない兵士が、自主的判断で敵に体当たりをすることと、組織として「九死一生」ではなく「十死零生」の命令を公式に出すことは、根本的に違うのです。(P238)

特攻が続いたのは、硬直した軍部の指導体制や過剰な精神主義、無責任な軍部・政治家達の存在が原因と思われますが、主要な理由のひとつは、「戦争継続のため」に有効だったからだと、僕は思っています。戦術としては、アメリカに対して有効ではなくなっていても、日本国民と日本軍人に対しては有効だったから、続けられたということです。(P257)

『大正っ子の太平洋戦争記』著者:美濃部正 (P266)

10代の後半の若者に、真夏の炎天下、組織として強制的に運動を命令しているのは、世界中で見ても、日本の高校野球だけだと思います。(中略)
その構図は「特攻隊」の時とまったく同じです。(P284)

そして、高校野球だけが問題なのではなく、みんななんとなく問題だと思っているのに、誰も言いださないから「ただ続けることが目的」となっていることが、この国ではとても多いのじゃないかと僕は思っているのです。(P284)

奇跡のような偶然で、僕は佐々木さんと会えたのだなあと思います。21歳の若者が、絶対的な権力を持つ年上の上官の命令に背いて生き延びることを選んだ。それがどんなに凄いことなのか。(P292)

 

本書の裏表紙にもあるけど、日本型組織というは〝いのちを消費する〟組織が他国に比べて多い印象です。真夏の高校野球や箱根駅伝、大相撲など、選手生命を消耗するようなものでも、精神主義的というか、伝統継続の為に変えられない様は、考えてみると恐ろしいことに繋がっているのかな・・・とも思えてきます。

残念ですが、日本型組織の弊害というものは、そこかしこにあると思います。

少子化で子供が少なくなっているのに、町内会イベントを減らすことはなかなかできないものです。仕事や家庭の都合で町内会で積極的に活動することが難しい人は辞めざるを得ません。ますます町内会会員は少なくなってしまいます。

学校のPTAしかり、部活動しかり、問題や軋轢が生じても昔のやり方を継続しようとします。継続こそチカラなりという言葉もあり、継続こそ日本の良い面ともいえます。

ですが、攻撃としての効果はほとんどないことを知りながら若しくは知ろうともせず、特攻を止められなかった日本の歴史を忘れてはならないと思います。

最後に、特攻に殉じ英霊となった皆さんに、心から感謝申し上げます。

(2018年の45冊目)

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