人類資金Ⅶ
著者:福井晴敏
発行:2015/7
講談社文庫
ちょこまか読んで一年間、ついに全七巻終わってしまいました。
全七巻とはいっても第七巻だけは三冊分の厚さがあるので、実質全九巻のボリュームですね。
いつでもページを開けば未知の人類資金ワールドがあったのですが、読み終わってしまいました。
読み終わって寂しくもあり、満足感もあり、時間が経ったら読み直すでしょうね、きっと。
素晴らしい大作でした。
読んでよかったと、出会って良かったと思います。
福井氏の他の作品にも登場する登場人物の活躍にはワクワクしましたし、本作品に登場する登場人物が他の作品にも登場することになれば・・・と今から楽しみにしています。
読んでいてぐっときてしまったところを記しておきたい。
この男も自分と同じ、せざるを得ないからそうしている〝ルール〟の囚われ人(中略)本家の人間ならやり直しもきくでしょうが、外様のわたしには再起のチャンスも与えられない。私にだって家族はいる。(P37)
『私たちは人間です。主権を持つ国家の一員、自分で自分の生き方を定める権利を持っています。東西冷戦は二十年も前に終わった。日本は反共の防波堤としての役割を終えた。敗戦のツケはもう払い終えたはずなのに、私たちはいまだに旧い〝ルール〟に縛られている。そう命じられたからではなく、変わる勇気を持てずに自分で自分を縛り付けて・・・』(P66)
人生は与えられるものではなく、つかみ取るものだ。(P210)
ジャンプスーツに包まれた肢体が奇妙に艶めかしく、(P241)
旧約聖書に語られるイスラエルの失われた十士族、そのひとつが日本人だなどという与太話を信じてのことではない。(P304)
あれはお仕着せの人道的支援なんかではない、人の中から自然発生的に生まれた援助だった。国の復興計画や、電力危機をビジネスチャンスと考える企業の大盤振る舞いより、無名の人から送られてくる一ドルが多くの日本人の心を救った。(P545)
人を、世界を動かすのは、〝神〟でもなければ主義でもない。経済だ。唯一、経済という〝ルール〟のみが人の行動を統べ、必要があれば世界に変化を促す。(P633)
人間の幸福とは、ゴールに到達することではなく、その過程の中にこそあるのではないかと自分は考える。(P667)
読み応えのある作品でした。ありがとうございます。
(2019年の15冊目)