世界で一番美しい住宅デザインの教科書

世界で一番美しい住宅デザインの教科書

巨匠『宮脇 檀』に学ぶ家の仕組み

著者:中山繁信 発行:2012/11

X-Knowledge

久しぶりに、建築家 宮脇 檀さん関連の本を読みました。僕の本棚には宮脇さんの本が10冊ほどあります。軽い気持ちで読みはじめたのですが、スケッチや図面、写真や解説文を見ているうちに、今は亡き宮脇 檀さんの住宅設計者としての才能に圧倒されたのか、震えてしまいました・・・。そのすぐ後に地震が来て、辺り一帯が震えだして更に驚きましたが(笑)。僕が言うまでもなく、宮脇 檀さんは、巨匠と言われる建築家でしたが、亡くなってもう20年にもなるのに、今でもその作品の斬新さは色褪せていないと思います。残念ながら既に現存しない作品も多いとは思いますが、見てみたいと思いました。没後20年の回願展がやっていたようですが、どうやら間に合わなかったようです。残念です。なにかやっていたらみたいです。

読んでみて、ぐっと来たところは、ほとんど全部なんですが、少しだけ紹介したいです。

 

作品も人柄も「モダンディズム」
宮脇さんは誰もが認めるダンディな建築家であった。そして、外見ばかりでなくセンスも良い。「モダンな住宅を設計するダンディな建築家」を略して、私はこう呼んでいる。(P22)

狭い空間を有効に使うこつは、こういった綿密な下調べと、それにもとづく細かく丁寧な設計にあるのだ。造付けの家具とは、収納棚のオーダーメイド化である。既製品の収納箪笥のように無駄な空間をつくってしまっては、建て主に満足してもらうことはできないだろう。(P46)

宮脇さんは都市部の建築の外壁には派手な色を塗るが、別荘地では内部に強い色を使う。それは、自然と調和させるための配慮が必要な外部とのコントラストでもある。(P62)

宮脇さんはこの石津氏から山中湖の別荘の設計を依頼された。石津氏が当時の若き建築家 宮脇 檀 に依頼した時の一言が「面白い家の案ができるまで見せなくていい」であった。(P76)

センチ刻みの設計
私はこれほど細部にわたって神経が配られ、何1つ無駄なスペースを出さずに設計された住宅を見たことがない。収納も一切の無駄をなくすため、必要なモノとその寸法が徹底的に洗い出され、それらをしまう場所を決めたうえで設計している。(P118)

リビングより半階上がり、45度の角度に振られたブースには、上部の高い吹抜けの解放感がある。リビングを上から見降ろす位置でとる食事は、このうえなく楽しく、そして心地よい。(P126)

しかし宮脇流住宅では、和洋室にかかわらず、必ずと言って良いほどこの障子が用いられているのである。(中略)
宮脇さんは、紙の張り替えが必要な障子を敬遠して、カーテンを好むクライアントを嫌った。きちんと手入れができなければ、美しい空間に住む資格はないというこだわりである。(P174)

高幡鹿島台ガーデン54(P178)

 

是非、本書を読んでみてほしいです。スケッチや図面、写真や解説文などの内容を考えると、ものすごくお得な本といえるでしょう。

(2018年の29冊目)

60歳で家を建てる

60歳で家を建てる

著者:湯山重行 発行:2016/03 毎日新聞出版

 

読んでいて、ピピッときたのは、

やりたいこと、やらなきゃいけないことが思い浮かんだら、やればいいのだ。P34

西武池袋線の入間市駅から徒歩で20分のところに、「アメリカの郊外にあるような街並み」が突然と現れる。「ジョンソンタウン」というその場所には、(後略)P36

玄関を開けると、建物の奥の壁までが見通せる30坪ほどの空間が広がった。いわば格納庫の一戸建て平屋バージョンといったところだ。屋根に沿った勾配のある天井は高く、所どころに置かれた観葉植物が間仕切り壁の役割をしていた。P37

(拙著『500万円で家を建てる』に登場するTOFUハウスのことだ)P45

その経験で感じたのは、家をコンパクトに造ったほうがその後の人生のメリットを多く享受できるのではないかということだ。P47

日本の人口減少問題をプラスにとらえ、その恩恵を少しずつ享受する。20XX年、政府の英断で、都市計画をゼロからやり直す「第二次列島改造計画」が実施される(もちろん妄想だ)。P80

比較的低コストで浴室を格段にリッチにする、お勧めの組み合わせを紹介しよう。バスタブから下だけの「ハーフユニットバス」という商品がある。P118

敷地の一部に「草の生えない固まる土」を敷くのもよいだろう。土とセメントを配合したハイブリッドな製品で、質感は土そのものだ。P126

使わない部屋は早々と傷んでくる。P137

次の家には今の家の良いところを持ってゆく P138

K氏は建築模型士で、(中略)電話で依頼があったそのクライアントは、家を取り壊すにあたって、何も残らなくなってしまうのは忍びないと、「思い出の家」を模型にして残したいと言ったのだそうだ。P139,141

60歳で建てるなら、信頼できる建築士と(中略)そこはきちんと住宅専門の建築家がいる建築士事務所に依頼するのが得策であろう。P142~143

高気密・高断熱住宅は、上手に住めば抜群の快適性を誇る。ただし、それはエアコンあっての高気密・高断熱住宅なのだ。P146

気持ちよさを感じる理想の天井高はどれほどなのか?あれこれ吟味した結果、私がたどり着いた結論が3~3.5メートルだった。P149

法隆寺の修復で有名な故・西岡常一棟梁は言った。「癖というものは何も悪いもんやない。うまく使ったらそのほうがいいということもありますのや。人間と同じですわ。癖の強いやつほど命も強い。癖のない素直な木は弱いし、耐久年数も短いですな」P210

どんなに調教されても真っ直ぐ走れず、斜めに走ってしまう「斜行馬」を見つけた。(中略)決められたルールの中では、斜行することがマイナスになってしまうのだが、その馬にとっての個性は斜行するのが唯一無二の特技なのかもしれない。だとすれば、調教という名の去勢をされ、普通の群れの中で勝負させようとするのがどだい無理な話だ。(中略)さよならのウインクをし、走り去ればいい。自分だけのフィールドで勝負すればよいのだ。馬群に埋もれない生き方---リスクも大きいが、彼にはきっと爽快な人生が待っているに違いない。P211~212

 

ここ最近は仕事で、2階建ての家を取り壊し、平屋建ての家に建て替えるケースに続けて携わっています。子供が巣立った後の夫婦がこれからも住む家として、コスパ的に、古い家の耐震診断をしてリフォームするぐらいなら平屋建ての小さな家を新築したほうがいいという判断です。著者が提唱する 60HOUSE は、そのとおりだと思いました。『500万円で家を建てる』も読んでみたいですね。

(2018年の28冊目)

雄飛 14

 

雄飛 14 著者:小山ゆう 発行:2018/06 小学館

読んでいて、

僕にとって譲れないものってなんだろうか
才能 もいろいろあるけど継続も才能かなぁ
仇を討ってやるってモチベーションは必須
反撃が凄かったってことは自信に繋がるね
達成感があることは大健闘があってのこと
積み重ねがあってこそ凄い攻勢に出た!!
紙一重の なにがなんでも が 勝敗 を決める
強きを挫き 弱きを助ける のは 尊敬 を得る
いま 全力 を尽くすべき は何か!! 決める
人 生 を 懸けている 人 達 には 同志 がいる

なぁ~んて、つくづく 思ったもんです。

この 雄飛 という 作品 からは、

元気 龍馬 あずみ の 集大成 を感じます。

8月末に発売予定の15巻が待ち遠しい。

(2018年の27冊目)

人類資金Ⅴ

人類資金Ⅴ

著者:福井晴敏 発行:2013/12 講談社文庫

 

読んでいてビリビリと〝しびれて〟しまったのは

行ってみて初めてわかる事々はある。(P19)

でも、それを実現するには、ぼく自身が確信できるなにか・・・・・・自分で自分に証明できるなにかを見つけなければならない。(P21)

まだ電話をかけたこともない後発国の人々、世界の半数以上を占める人々の中に、先進国のそれと同じ割合で才能が存在しているのだとしたら。(P23)

この世界から後発国や貧困がなくなり、全部が完全に市場化されたら、次はこの空の向こう、宇宙に飛び出していったっていい。思えば、叶わぬことはない。(P69)

利子ってのは、将来価値の先取りだ。常に貸出金額より返済金額の方が多くなる。その分は、将来的な利潤活動から・・・・・・極論すれば他の誰かから奪ってこなければならない。(P110)

シンガポールでは参謀本部の強硬な主張に屈し、華僑虐殺事件を承認した。(P150)

善良であったはずの個人が、国家・組織の論理に捕らわれた瞬間に悪を為す。組織人としての責任が、個々に課せられた道義的責任を圧倒して悪行を強要する。(P150)

ポツダム宣言の執行機関であるGHQの使命は、軍政日本帝国を民主国家・日本に生まれ変わらせることにあった。軍隊の解体、思想・信仰・集会及び言論の自由を束縛するあらゆる法令の廃止、財閥解体と農地解放に代表される民生化政策。これらの施策は、既存の日本政府機構を利用する関節統治の形で実施され、長い戦争で精神的にも物質的にも困窮の極みにあった日本人は、彼らの施策を砂漠に降る慈雨のごとく受け入れた。(P168~169)

植民地主義に成り代わる新しい支配形態の実験台になった、その結果として戦後の繁栄があるとするなら、そこに日本人の主体的意志は存在しない。すべて借り物、押しつけられたシステムの中で泳がされてきたのが日本という国家であり、おれという人間だ。(P190)

(2018年の26冊目)

中村好文 小屋から家へ

中村好文 小屋から家へ
著者:中村好文
写真:雨宮秀也
発行:2013/04
TOTO出版

 

読んでいて 気になったり 同感だなぁと思ったり したのは、

鴨長明の方丈(P16)
ヘンリー・デイヴィッド・ソローの小屋(P18)
猪谷六合雄の小屋(P20)
立原道造のヒアシンスハウス(P24)
高村光太郎の小屋(P28)
堀江謙一のマーメイド号(P32)

皆川 その胎内的な落ち着き具合が、小屋のとても大事な要素かなと。(P210)

皆川 小屋って、自分の気持ちと対話をしながら、自分自身を見つめなおす場所なのではないかということを、僕も強く感じました。(P211)

中村 僕は、小屋的な建物を見たり、そこに入ったりすると、「こういう場所こそが人のすまいの原型なんだ」という想いに取りつかれてしまうんです。(P212)

中村 (前略)「ひとつ屋根の下」という感じはぜひ欲しい。(P213)

風景に寄り添う小屋(P214)

皆川 窓枠によって外の見え方という切り取られ方が違っていますね。(P215)

中村 建築素材は、原則として古びたとき美しくなるものを使うようにしていますが、(P216)

中村 その味わいを愉しめるクライアントと一緒に仕事をしたいですね。(P217)

中村 住めるか住めないかは別にして、小屋や小屋的な建物を見るとけっこう血が騒ぎます(笑)。(P221)

中村 面積や予算などのハードルがいくつもあるからいいんだと思います。(P224)

中村 ヨットやキャビンの内部みたいな感じでしょう?(P224)

皆川 やっぱり、小屋は住宅とは違う。自分にとってのもうひとつのスペースとしての小屋は、人生でいろいろな経験をしてきて、好きなものとか自分の癖もあって、それだけを集めてもいい場所にしたい。小屋にはそういうことの意味というものが、あると思います。
自分が小屋に求めるものは、今までの自分というものをギュッと圧縮して、「自分にはこれだけで十分です」というものを小屋の中に持ってきて、ほかの付随するものは小屋以外のところに置いておいて、という住まい方なのかもしれません。(P226)

中村 たとえばヘンリー・デイヴィッド・ソローの小屋とか、高村光太郎の小屋とか、鴨長明の方丈とか、ああいう孤高の小屋へのあこがれが僕の中にはあるのかもしれない。(P227)

中村 小さな螺旋階段で上っていく(P231)

中村 「屋根裏部屋」と「小屋」とは、双子の兄弟と言ってもいいかもしれない。(P232)

玄関と台所を結ぶ道線に特別な「こだわり」(P235)

 

(2018年の25冊目)

小さな家、可愛い家

小さな家、可愛い家 TINY HOUSE
著者:ミミ・ザイガー Mimi Zeiger 訳者:黒崎 敏
発行:2012/07 二見書房

感銘を受けて、吸い寄せられてしまったのは次の3件です。
素晴らしい建物ですね。

こぶたの家 S(ch)austall ドイツ、ファルツ
設計:FNP Architeckten

P122より
一見、古めかしいお屋敷のようだが、元をただせば「豚小屋」だった。その名残りが正面の床レベルにある横軸回転式の開口部———かつて豚たちが出入りした戸口である。
建物そのものは18世紀の石造りの小屋だが、第二次世界大戦で損傷を負い、長年にわたり修繕されながら使用されてきた。

P125より
外壁から屋根が浮いていることで小屋の愛らしさが生じている。

P126より
風化した石積みの壁とは対照的に、内装は質素なラーチ合板でシンプルに仕上げられ、ギャラリーのようだ。
室内に張られた合板はけっして高価なものではないが、オレンジがかった照明が石壁の窓から漏れ出て、つい暖かそうな室内へ誘われそうである。

P129より
鬱蒼と茂る森の中に潜むように・・・・・・。灯る明かりが廃墟ではないことを物語っている。

 

ページを開いて・・・というのは気が引けるので、
以下の2作品については、簡単に 描いて みました。
長男曰く、「画力が足りない・・・」と直球の指摘(笑)。
あ~・・・検索して写真と比較しないように・・・^^;。

ビーチハウス Casa Mar Azul アルゼンチン、マール・アスール
設計:BAK Arquitectos

P58より
浜辺に建てられた1軒
ビーチ沿いに松林が長くのびる土地に建てる家
周辺の風景にうまく馴染むプラン

P59より
杉板型枠コンクリート打ち放しの壁面と屋根が描く水平ライン
粗い打放しのコンクリート壁でキッチンと寝室のプライバシーを守っているが、テラスやリビングを気品ある木材で仕上げているため、全体に木造家屋の感が強い。
片持ち梁の平らなコンクリート屋根だけで家全体を覆っているのも一興

P61より
本物のいい素材だけで造られたこの家は、海辺のどんな気候にも耐えられるような工夫が施されている。
防風林となる松林は、夏には心地よい日陰をつくってくれ、爽やかな海風が吹き抜ける。
部屋に明かりが灯り、荒々しいコンクリート空間と無垢材の家具が美しい調和を。

 

キノコの家 Woodland Cabine ベルギー、フランダース
設計:Robbrecht en Daem

P112より
森の中の一軒家
森の中を流れるせせらぎの畔にひっそりと佇み、おとぎ話に出てきそうな雰囲気を漂わせている。
ベルギーで昔から親しまれているコミック『スマーフ・ビレッジ』に登場する家をイメージして造ったという。
丸い壁は2つの円が重なる輪郭をなぞって、ピーナッツの殻のようなラインを描いている。

P113より
〝ピーナッツの殻〟の中央にはシンプルな薪ストーブがでんと据えられている。それを境に、一方の殻には明るい憩いの間が、もう一方の殻には檀状のベッドが設けられ、思いのほか室内はゆとりある空間になっている。
とりわけ角材を煉瓦のように積み重ね、凹凸の表面を強調した丸い壁は面白い。

P114より
無垢の木片を煉瓦のように積み上げた壁がそのまま室内に現れている。
林立する雑木林の足元に同化する小さな小屋はまさしく隠れ家だ。

P115より
小さな木橋を渡って入るというアプローチも、この〝隠れ家〟の一つの趣向である。

 

本書の世界の小さな家34作品は、いずれも独創的で見ていて楽しいです。
僕はそのなかで上記3作品に強く惹かれました。
素晴らしい〝小さな家〟です。
小さいって面白い!
ですね。

(2018年の24冊目)

人類資金Ⅳ

人類資金Ⅳ

著者:福井晴敏 発行:2013/10 講談社文庫

 

読んでいて〝しびれて〟しまったのは

改革のなんのと耳障りのいいことを言いながら、上の世代は自分たちのことしか考えていない。その場しのぎの延命工作で茶を濁すか、そうでなければ無責任なスタンドプレイでやりたい放題。あとは野となれの独善三昧だ。彼らはいい。古い秩序の恩恵をたっぷり享受してきたのだから、これまでが間違っていたとか、これからは発展や成長より人間の幸せを追求しようとか、好きなことが言える。ぼくたちはどうなる?高度成長の熱もバブルの狂乱も知らず、彼らがさんざん遊んだあとのツケを支払わされているぼくたちは?縮小タームに入ったこの世界で、彼らの言いなりに生産性の向上に努めるしかないのか?本音では自分たちが引退したあとの世界がどうなろうと知ったことではないと考えている連中、十年後の世界より年度末の決算を重要視している連中に顎で使われて、終わりゆく世界の目撃者になれとでもいうのか?(P111~112)

(前略)政治も、国防も、経済も。戦後の日本人が、自分で決められたことなんかなにひとつなかった。すべてアメリカから供与されたものだったからです。戦闘機や対艦ミサイルと同じ、日米協定で裁量される供与品でしかなかったからです」(中略)「私たちは人間です」(中略)「主権を持つ国家の一員、自分で自分の生き方を定める権利を持っています。始まりがどうであれ、戦後の七十年間を生きてきたのは私たち自身です。東西冷戦は二十年も前に終わった。日本は反共の防波堤としての役割を終えた。敗戦のツケはもう払い終えたはずなのに、私たちはいまだに古い〝ルール〟に縛られている。そう命じられたからではなく、変わる勇気を持てずに自分で自分を縛り付けて———」(P159)

(前略)つまり、日銀によるゼロ金利政策の解除が、リーマン・ショックの引き金を引いた」(P161)

寄付を集めて送り付ければ、飢え死にする幼児の何百人かは救えたと信じ、そうはならない現実を意識的にも無意識的にも無視する。この恣意的な先進国からの援助と、現地の個々のニーズをすり合わせるために、地域密着型の非政府組織(NPO)が東奔西走している国もあるが、ベテランの職員がたどり着く真理は常にひとつ。曰く、『援助で立ち直った国はなく、自ら変わろうとしない者を変えることはできない』。(P210~211)

縦割りの官僚主義、己の職分のみに忠良たれと説くセクショナリズムは、江戸の昔から続く日本の国民性と捉えられがちだが、現実には違う。自分で決めること、考えることを封じられた傀儡国家が、意識的にも無意識的にも養ってきた体質———すなわち、我々が与えたものだ。(P240~241)

 

解説や巻末にもあるが、この作品は、最初から文庫サイズで発表されている作品とのこと。新書サイズなどでは見かけるけど、文庫サイズでは少ないような気がする。そういう作戦で発売されているのですね。持ち運びしやすい小ささで、一冊一冊をお買い求めしやすいお値段で、多くの人に読んでもらいたい、という感じでしょうか。僕は〝紙の本〟が好きですし、印象に残ったところは〝野帳〟に書き写すのが好きなんです。ここに書いてる文章も一旦〝野帳〟に書き写したものから書いているんです。読んで気になったところは記憶に留めたいですし、自分自身にインプットするには手書きで書くのが僕にとっては良いようです。

ストーリーも俄然激しく動いてきましたね。この先どうなるんでしょうか!書店にⅤ巻が届いたようですし、取りに行こうかな!

(2018年の22冊目)

360°BOOK 富士山

360°BOOK 富士山
著者:大野友資 発行:2015/11 青幻社

心の友から本をいただきました。富士山の本なんです。

余談ですけど、僕たちの間では富士山のことを おじさん なんて言ったりもしています。

なんで〝おじさん〟?

ふじさん を おじさん に聞き違えて、大爆笑したことに端を発します。

それはともかく( ´艸`)、最も日本人に親しまれる山、富士山の本!

ケースから出してみると、???360°・・・・・・。開くと、

おおっ!

すっげ~・・・・・・なにこれ~・・・・・・富士山だ!

しかも鶴は飛んでるし、雲は浮かんでるし、太陽も出てる!

アイデアがすごい。うん。よく考えたね。ほんと画期的。

やりようによってはこんな面白い商品がつくれると。

目から鱗が落ちるとは、こういうことなんだね。

我が心の友よ、ありがとう。元気出たぜ!

人類資金Ⅲ

人類資金Ⅲ
著者:福井晴敏 発行:2013/09 講談社文庫

 

読んでいて、思わずしびれてしまったのは

被災地に救いの手を差し伸べた男が、小一時間前にはひとりの人間を脅かしつけ、破滅させようとしていたなどと信じられるだろうか。これと決めた相手への自己犠牲を厭わぬ献身と、人を人とも思わぬ暴力性が一個の人格の中で矛盾なく存在する。(P36)

大戦による喪失を埋め合わせるために、特例的に人口が増えた異常を、団塊ジュニア世代が少子化傾向によって正常化しようとしている。このまま行ったら、何十年後かには日本の年間出生数は一人になるなんて試算もありますが、ぼくにはそうは思えません。団塊世代が永眠し、高齢者人口が一気に減少し始めれば、出生数は自ずと回復してゆく。人口の適正値が何人なのかはわかりませんけど、どこかで底を打つ時が来ると信じています。(P60)

金を借りた者は、必ずそれを増やして返さなければならない。この〝利子〟という制度が、我々の社会に永遠の成長を強いているのです。(中略)
銀行も、投資家も、その者が将来的に富を生み出すであろうという予測、すなわち信用に基づいて金を出す。信用が失われれば誰も金を貸さない。あり余る金は金庫に死蔵され、経済は回らなくなり、みんなが困窮する本末転倒が引き起こされる。9・11、リーマン・ショック、ヨーロッパ債務危機、すべて構造は同じです。伸び代を使い切ったと誰もが暗黙に了解している世界では、いともたやすく信用不安が起こる。(P62)

個人参加の投資家も抱き込んで、「モノを言う株主」なんて言葉を流行らせたのも彼らです。株の配当が鈍いなら、経営に口出ししてでも株価を上げさせろ。できない経営者は首を切れ。そんな風潮が当たり前になれば、企業は短期収益が望める仕事しかできなくなる。長期開発投資が不可能になった企業は空洞化し、実業たる産業はさらなる衰退に追い込まれて、すべてが金融市場に寄りかかった脆弱な社会構造ができあがった。(P63)

企業を育てるのが投資家、株の上げ下げにヤマを張るのが投機家。確か、グレアムの定義だったよな。(P63)

融資に金利という基本条件がつく以上、貨幣経済システムは果てしない発展を強いられる構造を持つ。その構造、システムを維持するために、ぼくたちは自分の尻尾を食ってでも成長するよう仕向けられている。善意から始まったシステム、人を生かすためのシステムが、人を取り込んで使役する逆転現象が・・・・・・暴走が起こっているんです。(P68)

生きるためにはなんでも正当化する一方、ロシア正教伝来の宗教観ですべては神の思し召しと割り切り、自己矛盾を一顧だにしない強かさが彼らロシア人の根底にはある。国ぐるみの刻苦を経験した分、名より実の精神が染みついているのだ。終戦直後の日本を生き抜いた人々も、あるいはこんな目をしていたかもしれない・・・・・・(P76)

二十一世紀の最初の数年間、日本は規制緩和の波に乗って好況を享受し、ホリエモンに体現される拝金主義に国ぐるみで浸かったのだが、一般就業者に還元されない——と言うより、還元しないがゆえの好況だった——数字だけの好況は長く続かず、リーマン・ショックを待たずして個人投資家ブームは終焉。(P84)

「しかし尖閣はともかく、竹島はどうかな。あれは朝鮮戦争の最中に韓国が一方的に領有を宣言したものだが、当時の日本には発言権がなかった。島に軍事拠点を置いて、実効支配の既成事実を積み重ねている韓国を相手に、いまさら返還を要求するのは難しい。北方領土も然りだ。戦争に敗けたどさくさで、当時のソ連に奪われた。土壇場で不可侵条約を覆したソ連は、外交政策上うまく立ち回ったというだけのことで、批判されるには当たらない。それが政治というものだ」(P120)

 

さあ、Ⅳ巻ではどうなってゆくのか!

(2018年の21冊目)