大草原の小さな家

大草原の小さな家

Little House on the Prairie

著者:ローラ・インガルス・ワイルダー

画家:ガース・ウィリアムズ

訳者:恩地三保子

発行:2002/08(刊行:1935)

福音館文庫

大草原の小さな家〈インガルス一家の物語〉のシリーズの2作目、最も有名な〝大草原の小さな家〟を読みました。前作の 大きな森の小さな家 を後にして、一家は新天地を求める旅へ出る。全財産と家族を幌馬車に載せ、冒険というよりも、家族の生死の責任を負った旅の決断をした父さんと母さんの行動力には、当時の生きていくことの厳しさとロマンが、伝わってくるようでした。

 

読んでいて、ぐっときてしまったのは、

ウィスコンシン州の「大きな森」にあった小さな家をあとにしました。高い木立の間の、きりひらいた土地に、ひっそり、住む人もないままおいてきぼりにした、その小さな家を、馬車で旅立った日から、だれも二度と見ることはありませんでした。(P9)

とうさんは、鉄砲を肩にあて、ねらいをつけました。(中略)とうさんは、その緑の目にむかって、ゆっくり歩きだしました。そして、その目も、とうさんのほうへ、地面をはうように、ゆっくり近よってきます。(中略)うす茶でぶちのある動物なのです。とたんに、とうさんは大声でさけび、ローラは金切り声をあげていました。(中略)ローラの顔も手も、あたたかいしめった舌でなめまわすジャックを、しっかり抱きしめようとしていました。(p49) 感動の愛犬との再会

住みごこちのいい丸太の家は、いつもとちっともかわらない顔をしていました。みんながいってしまうことを、まるで知らないようです。とうさんは、戸口に立って、なかをぐるっと見まわしています。ベットの枠を、暖炉を、ガラスの窓を。とうさんは扉をきちんとしめました。掛けがねのひもは外にだしたまま。「今にだれかの役に立つだろうよ」とうさんはいいました。(中略)小さな丸太の家と小さな家畜小屋は、その静けさのなかに、さびしそうにうずくまっていました。(P389)

 

感動のエピソードは他にもたくさんありました。アメリカのフロンティアスピリットの一端を垣間見るようです。もともと生きるとは厳しく大変だけど、でも素晴らしいことなんだ。そんなふうに思えた本でしたよ。よかったら是非にどうぞ!

清水知久氏のあとがきに、「個人として、また民族や国民のひとりとして、自分にこう問いかけてみよう。自分のとる行動が、これから生まれ育つ七世代にどんな影響をあたえるか、と」とありましたがその通りですね。必要にして十分な製品や、例えば小さな〇〇に魅力を感じるのは、限りある地球環境の豊かな未来は、きっとその先にあるような気がするからです。

(2017年の32冊目)

ターシャの家

ターシャの家

Tasha’s Delightful House

著者:ターシャ・テューダー

写真:リチャード・W・ブラウン

訳者:食野雅子

発行:2005/11

メディアファクトリー

著者のターシャ・テューダー(1915~2008)さんはアメリカの絵本や挿絵の画家で、園芸家としても著名な方のようです。日野の古書店でこの本に出合うまで、僕は著者のことを知りませんでした。一般向けの家づくり関係の本が並んでいる書棚にひっそりと背表紙が見えていて、手にした瞬間に出会った感じがして、僕の自宅に来てもらうことにしたのです。

本には、最晩年のターシャ・テューダーさん、バーモント州の山奥に1700年代の農家を模して建てられたご自宅、歴史を刻んだ素敵な家具、自然のままのような庭が広がっていました。

日本の古い農家も趣がありますが、アメリカの古い農家もとても趣があります。むしろ、西洋化した現代の日本人にはアメリカの古い農家のほうがマッチしているのではないかと思うほどです。

本のなかの家具や調度品、ガーデニングの写真や記事を見ていると、ご婦人方には日本の農家よりも米国の農家のほうがお洒落でカッコイイと思うに違いありません。

本のなかで、少しだけ紹介されていますが、ターシャ・テューダーさんの絵は、アメリカ人の心を表現する絵と言われ、80冊以上の本を出版し、多数の輝かしい受賞作があり、一時代を築かれたすごい方なのですね。

〝ターシャの家〟は、広大な緑に囲まれた・・・というか、緑と一体化している無塗装の黒ずんだ板張りの古い木造の農家ですが、新しいモノには到底真似できない生命に寄り添った歴史や記憶を蓄えた静かでやさしい時間の流れるタイムマシーンのような空間が広がっているようでした。

今、映画が上映されているんですよね。-ターシャ・テューダー 静かな水の物語-という映画が。今度の日曜日に、なんとか時間をつくって、観に行ってみようかな!

(2017年の31冊目)

大きな森の小さな家

大きな森の小さな家

Little House in the Big Woods

著者:ローラ・インガルス・ワイルダー

画家:ガース・ウィリアムス

訳者:恩地三保子

発行:2002/06(刊行:1932)

福音館文庫

大草原の小さな家 のインガルス一家の物語シリーズ、読みはじめました。懐かしいです。アメリカ西部の大開拓時代(1860~1890頃)、家族と財産を全て馬車に乗せて新天地を求める旅。現代人の悩みなんてすべて吹き飛ぶような過酷で生死を懸けた移動。

どうしても、父親目線で読んでしまうのですが、今を生きる僕には耐え難いほどのリスクと責任を背負っているチャールズ父さんには、ただただ感服するばかりです。

それでも生きる為に西部の開拓民の人達は、前に進むしかなかったのでしょうね。生きてゆくだけで、子孫を残すだけで、大変なことだったでしょう。

こういう作品を読むと、原点に戻れるような気がします。生きてゆくって大変だけど、それだけで素晴らしいことなんですよね。

大きな森の小さな家(ログハウス)って考えてみただけで、ワクワクするね!仕事や生活に疲れたとき、読む作品としてお勧めです!

(2017年の29冊目)

大草原の小さな家

大草原の小さな家 -ローラのふるさとを訪ねて-

文:ウィリアム・T・アンダーソン 写真:レスリー・A・ケリー

構成・訳:谷口由美子 発行:1988/09 求龍堂グラフィックス

 

古本屋さんでこの本に出会い、懐かしくて手にしました。

大草原の小さな家 は、ローラ・インガルス・ワイルダー(1867~1957)の半自叙伝的小説で、日本ではNHKで1975~1982年(僕が小中学生の頃)にテレビ放映され、一世を風靡した名作ですね。ちなみに、僕はつい最近まで著者の実体験をベースにしたストーリーであったことを、知りませんでした。

アメリカ西部の大開拓時代、幌馬車に家族と全財産を積み込み、大自然のなかを旅をして、手に入れた土地に自力で家を建て、原野を開墾し、森を切り開き、狩りをして、自給自足の上で利益を上げて土地代を払い家族協力して生きてゆく。

先住民との衝突やならず者が襲撃してきたら自衛で守るほかない。急病人が出ても病院はない。手紙は遠く離れた街の郵便局までいかねばならない。テレビやラジオもない。熊や狼などの野生動物との闘い。大自然の猛威に翻弄される。せっかく育てた小麦などの農作物をバッタなどの害虫が大量発生して壊滅させられる・・・。そんななか夫婦協力して子どもを産み育て養ってゆく。次々に起こる困難に立ち向かって開拓者魂で生きてゆく。

時代背景や世界観がまったく異なりますが、インガルスファミリー、半端じゃない・・・。そしてアメリカ全土には数えきれないぐらいの開拓者がいて・・・。

大草原の小さな家 が、現代でも愛されているのは、やはりフロンティアスピリットに溢れた古き良きアメリカを体現した作品だからでしょうか。アメリカというのはすごい国ですね、昔も、そして今も。

本は、ローラのふるさとを訪ねて とあるように、物語の舞台となった場所や人物を文章と写真で楽しく案内してくれる内容となっています。改訂版も発売されているようですから、気になった方は是非どうぞ!

本文より

(P44) とうさんの歌った歌

旅はたくさんしたけれど 苦労は山ほどあったけど どこへ行っても じぶんの力で生きていくのが いちばんさ

(P58) しかし、とうさんはいった。「意志あらば、道あり。」

感動しました。震えました。僕なんか、まだまだ苦労が足りないないですね。

インガルス一家の物語、小説で読んでみたいと思います。ドラマはDVD化されているようですので観たいですね。

大草原の小さな家 LITTLE HOUSE ON THE PRAIRIE 、面白そうです。大草原のなかでは、小さな家は 生死に係る大切な家族の拠り処 であったことでしょう。現代社会の大草原とは、小さな家とは・・・興味は尽きないですね。

(2017年の28冊目)

小さいおうち

小さいおうち

著者:中島京子 発行:2012/12(刊行:2010/05) 文春文庫

松たか子さん と 黒木華さん の出演で映画化されているのは知っていましたし、直木賞受賞作であることも。映画化で話題になった当時、映画を観ようか、小説を読もうかと思ったけれども、機を逸していました。

バージニア・リー・バートン:作 ・ 石井桃子:訳の『ちいさいおうち』という絵本を今年の3月に読んだのですが、本作品のタイトルを思い出し、読んでみようかという気になって読書の機会を得ました。

ページをめくると、時代設定が昭和初期なのは知っていましたが、晩年を迎えた女中さんが過去を振り返る手記という形で、読者を昭和初期に連れて行ってくれるとは想像していなかったので、いい意味で予想を裏切ってくれました。スムーズにその時代に飛んでいけた気がします。

『小さいおうち』とはいうものの、現代の狭小住宅のような家というわけではなく、女中さんのいる家としては小ぶりな家という規模です。現代の庶民感覚からすれば大きな家に属するでしょう。

郊外の高台の赤い三角屋根の昭和モダンの文化住宅。会社重役の旦那様、若く美しい奥様、前夫との間の息子、女中の4人による『小さいおうち』での暮らしぶり。戦前、戦中、戦後の激動の時代を、女中視点で描かれているところが新鮮で、当時の庶民の肌感覚に近いのではないかと思った。

読みはじめて、最初のうちはそうでもなかったけど、徐々に作品の世界観に引き込まれていった。

読んでいて、百田尚樹の『永遠の0』が思い浮かびました。『永遠の0』では孫が、『小さなおうち』では甥の次男坊が、故人の想いを解く旅に一緒に読者を連れて行ってくれました。

人生がいつか終わるとき、やり残したことはあると思うけれど、まぁいいかと思えれば、それで十分かと思いました。独りで死んで、死後数日経って発見されても、幸せな結末ってこともあるかと。

素敵な作品でした。映画版もDVDで観たいと思います。

(2017年の27冊目)